No.066

News 93-6(通巻66号)

News

1993年06月15日発行

ホールに使用できる新しい音響材料

 ひとくちに音響材料といっても使用目的によっていろいろあるが、ここではホールやその周辺の室で使用できる新しい吸音材料を紹介したい。

 遮音材料とちがって、吸音や反射を目的とした材料は内装材料としての条件を満たさなければならない。長年、いや現在でも吸音材の代表であるグラスウールやロックウールは、そのままでは内装の仕上には使えないから、有孔板やクロスで表面をカバーして使用されていることはご存知のとおりである。グラスウールを有孔板で押さえた仕上げはホールやスタジオの標準的な吸音構造である。しかし建築全般に高い品質が求められている今日、こういった仕上げはあまり見掛けなくなった。図-1は最近のホールの吸音壁の例であるが、このように意匠的にかなり配慮された構造が用いられている。

図-1 福島市音楽堂の吸音壁

ホール内装材料の条件

 これをまとめてみると、

  1. 準不燃以上の耐火性能をもっていること
  2. ホール空間になじみやすい質感をもっていること
  3. 山型や曲面など任意の形状への加工が楽であること
  4. 衝撃などに対して丈夫であること
  5. 汚れにくく、また、清掃が楽であること
  6. 価格がリーズナブルであること
  7. 同じ品質の製品が安定して生産されていること
  8. 25~50mm厚の吸音用グラスウールボードに近い吸音特性をもっていること、すなわち、背後の空気層を設けることによって低音域から高音域まで、あまり山谷がなく、70%以上の高い吸音率をもっていること

などであろう。

 以上の条件の中で、a.は不特定多数を収容するホール内装材の絶対的な条件と考えてよいであろう。最近、ある条件をみたせば、ホールにも木材が使用できるようになったことは、NEWS92-04号で紹介したが、燃えない、燃えにくい、という性質は内装材料に求められる基本的な条件である。

 建築設計の立場からは、b.の材料の質感が大事であることは当然である。ホールの内装の大部分はコンクリート、石、煉瓦、各種の不燃ボード類、最近では金属のパネルやガラスの反射面もある。吸音面は客席の椅子だけでよいとする設計の考え方もあるが、一般にはエコーの防止と残響時間の調整を目的に、しかるべき箇所に吸音面が設けられる。したがって、吸音面はこれらの反射面と質的に調和することが意匠設計の課題となるのである。とくに聴衆や観客の目に直接とまる壁面の仕上げは、音響と建築デザインの意図がぶつかるところとなる。図-1はその一つの例である。d.の丈夫であること、e.のよごれにくいことなどの性質も、壁の仕上材料として無視できない条件である。

 新しい材料の最初の関門はf.とg.の条件であろう。新製品の発売にあたって、一定量の生産を確保できるようになるまでの期間をどのようにして乗り切れるか、これがメーカーとして一番頭を使うところであろう。f.の価格の点であるが、最近のホールでは大理石さえ珍しくなくなった。材料の単価よりも、むしろ施工性の方が問われる時代となった感がある。

 c.の加工がしやすいこと、これはとくに音響的にいろいろな形状を必要とする反射面に要求される条件である。図-2はサントリーホールの側壁のボード壁であるが、このような山型で、しかも上部がカーブした形状の面を市販の不燃ボードで造るには建築現場工事の枠を越えた施工技術が要求される。もしここに木材が使用できていれば、施工は随分楽だったであろう。内装材木材の利点はその質感だけではなく、その施工性にもある。

図-2 サントリーホールの壁

 最後はh.の音響特性である。特定の吸音特性が必要な場合もあるとは思うが、ホール用の吸音構造は低音域から高音域まで山谷がなく、大きな吸音率をもっている方が使いやすく、空気層を背後に設けたグラスウールなどの多孔質の材料が使用されている。ややデッドな多目的ホールや劇場の場合には、低音域の吸音を付加する必要があるが、逆にコンサートホールのようなライブな空間では、天井や床の低音域の吸音をいかにして少なくするかを考えなければならない。

 今回は次の三つの材料を紹介する。

クーストーン(COUSTONE)

 イングランドの特定の地方で産出される“フリントストーン(火打ち石?)”を粉砕し、特殊の樹脂で固めた(bonded flint)多孔質材料である。見掛けは軽石状であるが、粒は細かく、肌ざわりはやわらかい。その特色は、

  1. 2時間の耐火性をもつ準不燃材である。
  2. 標準のサイズは500×500mm、厚さ28mm、素材の密度は1.6、重さは40kg/m2である。
  3. 釘打ちが可能であり、切断も簡単である。
  4. 透水性があり、かつカビの発生がない為、イギリスでは水泳プールの吸音構造として広く使用されている。耐候性もよく、野外でも使用できる。
  5. 着色も可能であり、メーカーでは現在、素材の生地のほかに10種類の着色したパネルを市販している。
  6. 吸音特性は表-1に示すように、多孔質材料の典型的な特性である。100mmの空気層を設けることによって、250HZ以上の帯域で75%以上の吸音率が期待できる。
  7. 裏にプラスターを塗ることによって、500Hzで40dB以上の透過損失をもった遮音構造となる。音響透過損失の値を表-2に示す。
  8. 内装材として難をいえば、目地のない大きな面が市販のパネルでは造れないことである。
  9. 価格は現在約10,000円/m2程度とのこと。グラスウールよりは高額であるが、セラミック系の材料よりはかなり低額である。
表-1 クーストーンパネルの吸音率
表-1 クーストーンパネルの吸音率
表-2 クーストーンパネルの音響透過損失
表-2 クーストーンパネルの音響透過損失


 本材料についての問い合わせは: H.B.ホースバラ氏 (Mr.Harry B. Horsburgh)
  Tel & Fax: 0467-33-1858   e-mail: harry@sol.dti.ne.jp

アルミ焼結材(商品名:NDCカルム、NGKポアル)

 アルミの粉末を焼結した薄いパネルである。建築市場への登場はかなり前であったが、価格の問題その他で、その独特の質感が魅力的であったにもかかわらず、市場への浸透のテンポはゆるやかだったように思う。しかし、最近は使用実績が増えるとともに、ホールの内装にも使用されるようになった。本NEWS92-07号で紹介した劇場、“アート・スフィア”のバルコニーの前壁にこのアルミ焼結板が吸音パネルとして使用されている。曲面であること、従来の吸音構造を感じさせない質感など、このような場所には格好の材料といってよいであろう。その特色は、

表-3 カルムの吸音特性
(カタログより)
  1. 素材が金属であるから、不燃材である。
  2. 標準のサイズは495×495mm、厚さは2.5mmと3.0mmの2種類がある。比重は1.5と非常に軽量である。
  3. 釘打ち、鋲止めなどが簡単で切断も楽である。また、曲面への成型も可能である。
  4. 吸音特性はグラスウールと同じように、多孔質材料の特性である。背後に空気層を設けることによって、低音域の吸音特性が増加する。吸音特性を図−3に示す。
  5. 表面の仕上げはいろいろあるが、内装材としての質感の特色は素材そのものの肌ざわりにあるように思う。

本材料についての問い合わせは:
NDCエヌデーシー株式会社 カルム担当
〒275-0002 千葉県習志野市実籾町 1-687
Tel: 047-477-1133
日本ガイシ株式会社環境装置事業部
〒110 東京都千代田区丸の内1-5-1新丸ビル5F
Tel: 3284-8731

ヤマハのFPW処理によるの準不燃壁材

 木材の不燃化、難燃化についてはこれまでいろいろ試みられていることを聞いているが、ヤマハの天竜工場では特殊な防火薬剤を特殊な処理で、特定の木材に均等に含浸させることに成功し、この木材は木製防火扉として、また、壁材として市販されている。筆者は目の前で、処理したものと未処理のものの燃焼の違いを見せてもらったが、処理した木材は炭化はするものの、炎は発生しなかった。ただし、現在木材の種類は一つだけで、市販のパネルは長さ1818mm、幅130・90・30mmの3種類、厚さは18・15mmの2種類に限られている。価格は50,000/m2と、かなり高価であり、一般の内装材として気楽に使用できるまでにはしばらく時間が掛かるであろう。しかし、堂々と使用できる木材があるということは、設計側としては有り難いことである。

問い合わせは:
ヤマハ株式会社 サウンド・インテリア事業部まで。
〒435 静岡県浜松市青屋町283
Tel:053-461-6115
Fax:053-465-1523

NEWSアラカルト

サントリーホールのオルガンレクチャーコンサート

 サントリーホールのオルガンレクチャーコンサートも今年で7年目を迎える。今年は6月27日、9月15日、11月3日、いずれも日曜日の11時開演。前半はレクチャー、後半が演奏という内容である。チケットは2,000円。毎回、満席という評判のコンサートである。テーマおよび出演者は次のとおりである。

6月27日9月15日11月3日
テーマバッハへの道南からバッハへの道北からバッハからの道
講師金澤正剛菅野浩和丹羽正明
オルガニスト今井奈緒子椊田義子ブライアン・アシュレー

問い合わせ:サントリーホール・チケットセンター Tel:03-3584-9999

(株)永田穂建築音響設計事務所の社名変更について

 永田が現在の事務所を自宅で開設したのが1971年の6月、信濃町に事務所をかまえてからもそろそろ20年になります。その間、大過なく現在にいたりましたことは、皆様のご支援によるものと感謝しております。20年といえば一つの区切りの年。新しい方向への発展のきっかけの一つとして本年7月1日から社名を下記のように変更いたします。長い社名も今月で終わり、本NEWSも来月からは永田音響設計ニュースとして登場します。今後ともよろしくお願いいたします。

新社名:株式会社 永田音響設計 NAGATA ACOUSTICS Inc.

なお、住所、電話番号は変わりません。