No.032

News 90-8(通巻32号)

News

1990年08月25日発行

つくば国際音楽祭を120%楽しむ会の紹介

今秋の“つくば国際音楽祭”は、“モーツァルトの楽しみ”というテーマで筑波学園都市のノバホールにおいて第6回目が開催されます。“つくば国際音楽祭を120%楽しむ会”は第2回の音楽祭をむかえたとき、音楽祭が定着し、さらに発展することを願ってこれを組織いたしました。内容が充実しているにもかかわらず、毎回、聴衆を集めることに無理があった等の前年の経験から、音楽祭を創るのは人であること、ホール、音楽家、聴衆が一体となって幸せな音楽祭(会)となるのだという、ごく当たり前のことを再確認し、音楽家と聴衆とがステージと客席に分離されたままでなく交流すること、聴衆も感動を語り合い音楽の歓びを共にし、音楽祭を盛り立てていこうと考えました。出来ることを無理なく積み重ねていくという方針で歩んできたこの会の活動内容を具体的に紹介いたします。

つくばノバホール

1.チケット販売協力

  • 音楽祭のポスター掲示
  • チラシ配布の協力
  • 友人、知人を音楽祭に勧誘

2.演奏会場でのサービス

  • 演奏会当日、会場の受付、アナウンス等裏方のお手伝い
  • ホールホワイエで、コーヒー、CD等の販売(利益は会の重要財源です)
  • アーティストを迎えてのパーティー企画・運営(昨年は9公演中7回実施)

これはどなたでも会費500円で参加していただける会の活動の中心となるものです。心なごむ数々のつくばノバホールの集いのなかで、ロスアンへレスさんをお迎えした日がちょうど彼女のお誕生日で、手作りのケーキでのバースデイパーティーとなったことは、特に思い出深いものです。

3.120%楽しむ会主催のコンサートの開催

音楽祭に出演されたE.ヘフリガーさん、W.ヒンクさんを再びノバホールにお招きして、またW.ベネットさん、D.アダムさんには筑波第一ホテルでのお茶とお菓子付きコンサートにおいでいただいて、コンサートを開きました。

通信の発行、その他

音楽祭の情報や会員の声などを通信として発行し、一年分一家族千円を通信会費として納めていただき、会員証代わりに、音楽祭のポスターデザインによるテレフォンカードを作りお渡ししています。現在会員は350名(200家族)です。

昨年秋、ノバホールで催された一般のコンサートの時ですが、音楽祭とは違って何か欠けていることを感じて、ホワイエで考え込んでしまったことがありました。セッティングは同じようにされていても、受付、プログラム売場、コーヒー売場を結ぶものがここにはなかったのです。日頃の活動の中で意識してはいませんでしたが、音楽祭では実行委員会と120%楽しむ会とのチームワークが確実に育っていることを心強く思いました。

ノバホールの名称は、ラテン語のNOVA(新しい)によるものですが、当地で“のば”というと何も育たない荒地のことであることを最近知りました。音楽祭を育てるのは、荒地を豊かな緑野にするように労力と時間がかかる事でしょう。けれども、私どもにはノバホールというすばらしいホールがあります。この恵まれた好条件に感謝し、これを活かし、音楽祭を慈しみ育て、命名の意図の通りに芸術文化の新たに生まれる場となりますようにと、120%楽しむ会の活動の輪をさらに拡げていきたいと思っています。(逆瀬川敬子 記)

*今月原稿をお寄せいただいた逆瀬川敬子氏は音楽に対しての造詣が深く、児童合唱団の指導を続ける一方、夫君の逆瀬川浩孝氏(筑波大学社会工学科助教授、つくば国際音楽祭を120%楽しむ会会長)を助けて、地域の音楽活動を推進されておられる。地域の音楽活動が根付くかどうかは、民間の地道な活動の積み重ねが不可欠な要素であることはいうまでもない。また、このような市民のサポートがなければノバホールもただの市民会館にとどまっていたであろう。ご関心のある方はぜひ直接にお話をお聞きになるのがよいと思います。

連絡先:〒305 つくば市並木2-211-103 TEL:0298-52-0810

第6回つくば国際音楽祭の紹介

今年のつくば国際音楽祭は9月29日から10月20日の間まで8回にわたり、“一年先取りしたモーツァルト・フェスティバル”としてノバホールにおいて開催される。プログラムは下記の通りである。

  • 9月29日(土)2:30PM
    【古楽器の典雅な響き】
    リコーダー:ハンス・マリア・クナイス
    チェンバロ&ピアノフォルテ:ウォルフガング・ツェーラー
    バロックアンサンブル東京
  • 10月12日(金)7:00PM
    【モーツァルト時代の予約演奏会】
    クラリネット:ペーター・シュミードル
    ヴィオラ:クラウス・バイシュタイナー
    ピアノ:遠山慶子 ゼフィルス弦楽四重奏団
  • 10月20日(土)2:00PM
    【子供コンサート‘90】
  • 10月25日(木)7:00PM
    【G.ジェルメッティ指揮シュトゥットガルト放送交響楽団演奏会】
    モーツァルト/フィガロの結婚序曲ほか
  • 11月1日(木)7:00PM
    【モーツァルト協奏曲】
    ファゴット:馬込勇、クラリネット:四戸世紀
    ポーランド室内管弦団
  • 11月9日(金)7:00PM
    【ニューヨーク・ジャズ・エッセンス】
    ソニー・フォーチュン&ニューヨークJAZZオールスターズ
  • 11月22日(木)7:00PM
    【アンサンブル・ウイーン=ベルリン九重奏演奏会】
  • 11月24日(土)2:30PM
    【アンネ=ゾフィー・ムター ヴァイリン・リサイタル】

なお、曲目、チケットなどについてのお問い合わせは、つくば国際音楽祭実行委員会事務局(TEL:0298-52-5512)まで。

NEWSアラカルト

沖縄コンベンションセンター 劇場完成

沖縄コンベンションセンターの劇場等が竣工し、8月2日、盛大に柿落としが行われた。沖縄コンベンションセンターは、沖縄県が本土復帰十周年記念事業の一つとして、宜野湾市の海に面した風光明媚な敷地に建設を進めてきたもので、第一期工事として、5000人収容の大展示場と、500人収容の大会議室を持つ会議棟が1987年8月に開館している。劇場棟の竣工によって、すべての施設が完成し、コンベンションセンターとして本格的な運用が始まった。建築設計は大谷幸夫+大谷研究室・国建、施工は竹中工務店・国場組他の共同企業体である。

今回完成した劇場は、容積18191.0m3、客席数1739席の二層のバルコニーを持つ多目的ホールで、一般の多目的ホールに比べて、次のような特徴を持っている。

  • オペラの上演を考慮した舞台まわり、舞台設備
  • 歌舞伎にも使用できる本格的な花道(仮説設置)
  • 客席側部、舞台後部に設けられたガラス製の大壁面
  • 長時間の会議に対応できるスピーカ設備
劇場の内観

なかでも、客席部のガラス壁は、劇場の中に沖縄の眩しいほどの外光をもたらし、人工照明が常識の劇場のイメージを一変させている。もちろん遮光カーテンによって、劇場内を暗転させることができるが、この劇場しかできない自然光のそそぐ明るい劇場としての新しい使い方や演出が生まれることを期待している。
オペラについては、広い脇舞台、舞台下まで使えるオーケストラピット、充実した舞台連絡設備に加え、海外製のオペラカーテンが設置され、雰囲気を盛り上げている。

残響時間は約1.8秒(舞台反射板使用、80%収容時、500Hz)。低音の量感を狙って、中音域に比べて低音域での残響時間の長めの設定をやや強くしている。一席あたり10.5m3という大きな室容積、開き角度のきわめて狭い袖壁など、コンサートホールとしての音響効果の点でも好ましい条件を実現しており、今後、様々なコンサートに使われての評価が楽しみである。

8月16日、17日の二晩にわたり、グランド・オープンを記念して、ヨーロッパを中心とした歌手、オーケストラによるイタリアオペラ「リゴレット」が上演された。最近、話題になったミラノ、ミュンヘン等の著名オペラ座の公演に比べれば、上演規模など、ささやかなものであったが、本場のオペラの雰囲気を十分に楽しむことができた。幕が進むごとに、出演者も観客も乗ってきて、グランド・オープンにふさわしい楽しい一夜となった。このような気軽に楽しめるオペラを今後もぜひ続けてほしいものである。

劇場の音響については、本オペラ公演関係者の評価も良いとのことで、音響設計を担当したものとして、ひとまず胸をなでおろした次第である。筆者の印象でも、客席における音の響き、歌手とオーケストラとのバランスなどは良かったように思う。

本コンベンションセンターの音響設計にたずさわってすでに7年以上になる。私どもの事務所で現在継続して実施している業務の中で、もっとも長いものとなった。この仕事をとおして、施主、設計、施工等、関係者の本センター建設にかける熱意、また、音響設計に対する理解・協力は忘れられない。なかでも印象に残るのは大谷先生のお仕事ぶりある。この劇場を含めてセンターの建物には、コンクリート壁面に数多くの花の装飾があるが、この花の下絵はもちろん、実際の色付けも先生自らされたものである。冷房のまだ入っていない酷暑の現場で、足場板に上がり、長時間黙々と色付けされている先生の姿をしばしば拝見した。先生はある公演で“建物には捧げものとしての装飾に意味がある。それはできるかぎり自らつくるものでなければならない”とおっしゃっていたが、まさにこれを実践されているのである。もし本センターを訪れる機会があったら、大谷先生の気持ちの込められた装飾の数々を見ていただきたい。(中村秀夫 記)

第11回草津夏期国際音楽アカデミー&フェスティバル開催中

1980年、草津天狗山レストハウスを改造して始まった音楽祭も今年で11回目を迎えた。今年のテーマは“1790年をめぐって―古典派からロマン派へ”で、モーツァルト、ハイドン、ベートーベンの三人の作曲家の室内楽を中心とした演奏が17日から29日まで草津高原で行われている。
今年からは遠山一行先生が音楽監督として就任された。昨年にくらべてさらに盛況で、レストハウスは通路も通れないほど一杯の聴衆であった。しかし、来年には新しいホールがこの草津町に誕生する。苦心して張った天井の反射パネル、ステージに持ち込んだ反射板も今回が見納めであった。また、雨音対策として屋根に敷かれたマットも色褪せていた。
この10年間、この音楽祭を育ててこられた井阪絃氏の努力にわれわれの技術が力になれたことは一つの喜びであり、思い出は深い。いろいろな方との出会いもあった。自然の美しさのなかで素朴な音楽の集いが続くことを願っている。

第3回コイノスコンサートのご案内(再)

前号でもお知らせしましたように、第3回コイノスコンサートが9月15日バリオホールで開催されます。コンサートの前に、音楽学の礒山先生の“モーツァルトの愛したウイーン”というお話があります。チケットは3500円、永田事務所でも斡旋いたします。